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第9回 PCAポンプのトラブルシュート
今日は電動式PCAポンプのトラブルシュート(警報の対応)についてメーカー
側から説明してもらいます。
その前に、トラブルシュートに対する私の考え方を少しお話させてください。
電動式PCAポンプが発するアラームについて、「対応が煩雑」という指摘
看護師さんからよく聞きます。しかし、アラームは、「私たち医療者が本来
期待する状況とは違うことが発生していることを伝えてくれる」、「予定通り
のことが行われていないことを教えてくれる」と受け取るべきだと思います。

そして、これこそが、私が電動式ポンプを使用している理由です。その意味
でも、アラームの内容及び一次対応の方法は十分に理解してほしいのです。

それでは、電動式PCAポンプのトラブルシュート(アラームの対応)について
説明します。
PCAポンプのアラームは、「故障のアラーム」、「気泡や閉塞圧などの操作上
のアラーム」、「バッテリ消耗や設定した投与が終了したときのアラーム」
に大別されます。
アラームが鳴った時、電動式ポンプは
その内容が確認できるんですよね?
何か異常があれば、ポンプはビープー音を発し、何がおきているのかは画
面上に日本語で表示します。
さらに、ビープー音を消すにはどの操作キー
を押せばよいのかも表示されます。

アラームが鳴ったときの具体的な対応は、まず、アラームの内容を画面
から読み取って、指示された操作キーを押してアラーム音を消します。
次に、トラブルシューティング表を参照して問題を解決します(図8)。
そして問題解消後にスタートキーを押すと再起動します。
先ず画面を確認して、音を消して・・・うちの病院ではポンプに取り
付けてある「あの表」ですね、それを参照確認して・・・
問題を解決して、リスタート・・・わかりました。
で、先程の3つの警報のとき、それぞれの対応を教えてくれますか?
はい。まず「故障のアラーム」ですが、一度ポンプを停止させてください。
その上で再起動してください。それでも同じ表示が継続する場合は、直ちに
ポンプの使用を中止し、別のポンプに取り換えてください。
これは交換しかないんですね
そうなんです。ポンプの基板やモーター等の異常が疑われますので、使用中止
した上で修理が必要な状態です。
次に、「バッテリ消耗アラーム」は、多くの輸液ポンプと同様に、消耗アラー
ムが出た時点でAC電源に接続すれば、AC駆動になると同時に、自動的に充電
が始まります。
バッテリはどれくらい
もつのですか?
現在使用している機種ですと、フル充電からの使用で約72時間(バッテリ
節約モードで5mL/hrの連続投与条件)です。バッテリの使用が進めば
劣化してゆくので、これはあくまでも目安です。ポンプ表示画面の右上に、
携帯電話と同じように充電状態の表示があります(図9)。電池表示が0の
場合は、フル充電の25%を切った状態なので、それを目安に管理してください。
また、バッテリ完全消耗の3分前になると、アラームを発します。
その他ですと気泡や閉塞圧ですね。でも、今使っているラインだと
輸液フィルターがあるので、気泡検知は必要ない気もするのですが?
輸液量の設定と薬液バッグの容量が一致し、最初のプライミングが確実で
あれば、外部からの空気の混入は理論的にありません。しかし、室内の温度
変化による薬液内マイクロバブルの発生などで、空気がライン内に集積される
こともあります。
設定により違いがありますが、0.3mLを越える空気が流れた場合、あるいは
7分間の累積で0.5mL以上の空気が流れた場合に気泡検知アラームが発生
します。
確かに、輸液フィルターにはエアー除去機能があるので、空気注入のリスク
は低減できます。
しかし、PCAの設定の多くは、少量投与ですので、空気がライン内にあると、
本来ボーラス投与されるべき量に影響が出てしまうので、やはりライン内の
空気モニターは必要です。
なるほど、わかりました。後は閉塞ですよね?
PCAポンプよりも薬液バッグ側(上流)や患者さん側(下流)で閉塞が起こると、
患者さんがボーラスボタンを押しても薬液が投与されず、警報が鳴ります。
上流側の閉塞の原因としては、薬液バッグが空になっている場合、専用ポー
チやケースを用いているとき、その中でラインが強く折れ曲がっている場合
です。
下流側の閉塞の多くは、輸液チューブや硬膜外カテーテルの折れ曲がり、
時には三方活栓やクランプが閉じられているために発生します。
閉塞アラームへの対応は、PCAの投与ライン(チューブやカテーテル)を
確認して、折れ曲がりなどがないか確認の上、あれば修正してください。
ありがとうございました。ポンプのトラブルシュート方法をポンプ自体が
教えてくれるので便利な機能だと思います。みなさんも内容を確認して対応
してください。
どうしても対応できない場合には、臨床工学部や麻酔科に問い合わせてくだ
さい。
最後に米国食品衛生局が公表しているPCAポンプのトラブルデータがありま
す(図10)。
これを見ると、その多くが操作ミスによるものだとわかりますが、このよう
なミスが発生しにくい装置の開発がさらに進めば、より安全性が増すと思い
ます。
メーカーさんには期待したいところです。